ごあいさつ

 日本におけるHIVの日和見感染症の発生動向は、法に基づくHIV患者の届出データによるエイズ動向委員会報告と、厚生労働科学研究費によって継続されている日和見合併症アンケート調査によって知ることが出来る。前者のエイズ動向委員会報告データでは感染症法に基づく届出データを集計解析したものであるため捕捉率は高いと推測されるが、報告義務があるのはHIV/AIDSと診断して7日以内という縛りがあるため、1) 届出後に診断が確定したり届出後に新規発症した日和見合併症は反映されないこと、2) 届出まで十分な期間がないため、診断が不正確であったり、あるいはすでに発症しているが診断できていない疾患がある可能性があること、3) 発症後の予後については把握できていない、という限界が存在している。後者の厚生労働科学研究研究費エイズ対策事業として継続されてきた日和見合併症アンケート調査は、1995年より開始され今日まで20年近いデータが蓄積されてきた。アンケート対象は全国HIV診療拠点病院のみであり、かつ強制力のない調査であるが、毎年60〜70%の回収率が維持できており、エイズ動向委員会のデータから推測するとおよそ80%超の症例情報について捕捉できていると推測されている。本調査の強みは、診断後十分な時間が経過している症例を調査対象としているため、1) 日和見合併症の診断がより正確であると予想されること、2) 治療後の予後が判明している事、3) 発症後短期間のうちに新規発症した重複日和見合併症も把握できること、4) HIV感染の診断後、長期間が経過した後に発症した日和見合併症も捕捉対象となっていること、であり、本調査は日本の日和見合併症発生動向調査としては、現状をより正確に反映している貴重なデータであると考えている。

 さて、日和見合併症アンケート調査は、平成27年度より日本医療研究開発機構エイズ対策実用化研究事業として、全国HIV診療拠点病院の担当者の方々のご協力を得て、現在まで継続実施することが出来た。多忙な診療業務にも関わらず、本調査の意義をご理解いただきご協力いただいた全国の担当者の皆様方に、この場を借りて心から感謝を申し上げる次第である。

 今回、集積された貴重な疫学データを、広く全国の医療機関へ情報提供することを目的として、このホームページを公開することにした。現在、日本のHIV感染者においてどのような日和見合併症が見られているのか、抗HIV治療導入後の日和見合併症発症はどの程度あり、それがどの時期に発症しているのか、発症後の予後は改善しているのか、などのいくつかの臨床的な疑問の答えを集計データの中に見いだせるものと思う。また本研究班では2007年より、近年増加傾向となってきている非エイズ指標疾患悪性腫瘍についても調査対象に加え、疫学データの集積を継続している。HIV感染者でどのような悪性腫瘍が発生しているかのみならず、非HIV感染者と発生動向の違いがあるのか?、感染経路別、年齢別、抗HIV治療期間との関連は?、という観点からも解析を行い、多くの図表を作成した。是非、ご覧頂き、忌憚ないご意見を頂ければ幸いである。

 本研究が、日本のHIV感染症における日和見合併症、悪性腫瘍の実態理解と診療の場において少しでもお役に立てることを願っている。

平成29年3月31日
日本医療研究開発機構エイズ対策実用化研究事業
「ART早期化と長期化に伴う日和見感染症への対処に関する研究」班
研究代表者 照屋勝治